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小城市が今年3月、生活保護費を不正受給したとして市内の男性(58)に全額返還を求めた訴訟の和解協議が佐賀地裁で進行し、今月5日に分割返済などの 内容で和解が成立する見通しだ。生活保護費の不正受給を巡って県内の自治体が訴訟を起こすのは初めてで、小城市は提訴した理由を「最初からだまそうとして おり、再三の返還の督促にも応じなかった悪質なケース」と説明している。受給は本当に悪質だったのか、被告男性を訪ねた。【春田周平】
「仕事もなく、まともに食事もできなかった。息子に『冷蔵庫に何も入ってないけど、何かなか』と言われたとき、本当に惨めで、悔しかった」
5月下旬の早朝、前日夕方から二つのアルバイトをはしごして夜勤を終えた男性は、自宅近くのファミリーレストランで、生活保護費受給直前の心境を、記者にこう語った。
男性は約10年前に離婚。定職がなく収入が少なかったために2人の子供の親権は得られなかったが、子供たちは男性との生活を望んだ。約6年前から、発達 障害で療育手帳を持つ長男(19)と定時制高校に通う長女(18)とアパートで暮らす。学費など養育費は男性がアルバイトなどをして払ってきたという。
生活保護を受けることになったのは、2009年7月、解体業の仕事中に骨折したのがきっかけだった。
保護費は原則、世帯分が支給されるが、小城市は県と協議して(1)男性に親権がない(2)前妻に子供名義の多額の預金がある--ことなどを理由に、男性分のみ保護費を支給した。
だが男性は、子供の学校関係の出費が増えて保護費だけでは足りないことから、けがが治ると市に申告せず、その年の冬に約4カ月間、ノリ収穫のアルバイトなどをして収入を得た。骨折の際の保険からの入院給付金も申請なしに受け取った。
小城市福祉課は「入院給付金について男性は、生活保護申請時の面接で保険には入っていないと言っていた」と不信を隠さない。
結局、男性はアルバイトをして収入を得ながら保護費を不正に受給したとして、詐欺容疑で逮捕され、有罪判決を受けた。
男性は「うそをついていないとは言わないが、子供たちに食べさせられない状況をつくるのを避けたかった。子供の分も保護費をもらえたら、罪を犯していなかった」とポツリと語った。
市福祉課は提訴の理由を「男性は刑事裁判の際、分割で返済すると言っていたのに、計5回の催促にも応じなかった」としている。
ただ男性によると、判決が出るまで3カ月間は拘置所と留置所の生活で、一括返済の督促状がその間に3回、判決確定後に自宅に2回、届いたという。
男性は「3カ月間収入がないのに一括返済を要求され、どう払えばいいのか分からなかった。実生活を見てほしい」と訴えた。